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21世紀の情報通信ビジョン
IT JAPAN for ALL

「21世紀における高度情報通信社会の在り方と行政が果たすべき役割」最終答申

電気通信審議会 平成12年3月29日答申

(平成10年諮問第59号) ―抜粋―
郵政省 通信政策局政策課

我が国経済の構造改革、少子高齢化等21世紀の諸課題に的確に対応していく上で、国民生活及び経済活動の基盤としての情報通信が目指すべき政策の方向性について、平成12年3月29日に電気通信審議会から郵政大臣に「21世紀の情報通信ビジョン」が答申されました。

 

1.基本的な考え方

情報通信は社会経済改革の原動力です。この変革を加速・推進するため、政府としては、次の3つの目標の下、総合的な政策展開を図ることが重要です。
@世界最先端のネットワーク利用環境を実現すること。
A柔軟でダイナミックな情報通信ネットワークと、国民誰も情報通信を使いこなせる利用環境を実現すること。
B国際的な連携・協調を一層強化し、地球規模の情報通信の調和ある発展に貢献すること。
また、ITの進歩は速く、ITの普及・浸透によってビジネスや社会生活のあり方も急速に変化していくことから、政府としては、次の3点を基本的な原則として、具体的な施策の展開を図っていくことが重要です。
@情報の収集と公開による「的確な動向把握と情報提供」。
A適切な「方向性の提示」。
B「スピード」を持った「政策資源の投入」。

2.情報通信分野の5つの潮流

現在、新たな技術の活用によって情報通信分野の市場やサービスは刻々と変化しています.基本的な戦略の検討にあたり、明確に認識すべき潮流と考えられるものを整理すれば、次の5つに集約できます。

(1)「高速」「常時接続」「低廉・定額」
インターネットについては、常時接続・高速で利用できる環境が生まれれば、これに応じて高度なアプリケーションの開発・提供が進み、それが利用の増加、大容量・高品質な回線の需要を生む、という好循環が形成されます。このような流れを一層加速させていくため、制度面、 技術面、財政面から、総合的に講じていく必要があります。

(2)通信・放送の融合化
通信及び放送分野におけるデジタル化の進展や技術革新による 伝送能力の飛躍的向上等に伴い、通信と放送の中間領域的サービスのネットワークの共有化や通信と放送サービスなどが多く見られるようになってきています。政府としては、制度的及び技術的な環境整備を進めていくことが必要です。

(3)加速するネットワークとユーザー・ニーズの高度化
ネットワークの構築、この上で展開・流通するアプリケーション、コンテンツ、これらに係わる技術開発及びビジネスのどれをとっても、目覚しいスピードで変化を遂げています。重要な変革を、技術・サービス両面から展望すると、以下の4つに整理できます。
@ネットワークの「IP化」の進展
A「モバイル化」の進展。
B「ユビキタス化」の進展。
C「ネットワーク」 「アプリケーション」「コンテンツ」の融合。
このような流れの中で、機器・サービスの両面から既に多様な市場が誕生し、短期間のうちに急成長を遂げています。 政府としては、我が国の情報通信産業が情報通信分野の巨大な新市場におけるデファクト・スタンダードの国際競争において戦略的優位性を確保できるよう、以下のように民間の活動を加速・推進するための「触媒」として機能することが期待されます。
@優れた技術やサービスを有する先行者を的確に認知し、基盤技術開発から普及に至るプロセスを総合的に支援するとともに、テストベッドの構築等によって、先行的なサービス・技術の実証の機会や実績作りの場の提供等を行うこと。
A国自ら行う研究開発の分野を抜本的に見直し、 リスクが高く民間のインセンティブが働きにくいが、将来的な市場創造と国際競争力の観点から不可欠な領域に、人的・資金的資源の再配分を行うこと。
B柔軟な制度運用を行うこと。
C情報通信の高度化に向けた支援組織、法制の見直し。

(4)ボーダレス化
ITの浸透により地理的・時間制約から解放され、世界中から「リアルタイム」かつ「ダイレクト」なコミュニケーションが可能となるため、我が国も、自国の文化s等の他国にない「魅力」を対外的にアピールすることが重要です。

(5)情報通信の担い手の多様化
情報通信の活用により、先端的研究開発を行う大学やベンチャー企業はもとより、地域コミュニティ、NPO等小さな社会集団がグローバルに大きな存在意義を持ち得る可能性が増大しており、これらの活動を支援することが必要になります。また、全国民の情報通信に関する知識・技術を底上げすることが必須です。

3.情報通信分野の2つの課題

以上の流れの中で、早急に克服すべき課題も顕在化しつつあります。
(1)デジタル情報格差(Digital Divide)
所得、年齢、教育レベル、地理的要因、身体的制約要因等によるインターネット等の情報通信手段に対するアクセス機会及び情報通信技術を習得する機会の不平等(デジタル情報格差(Digital Divide)が国内及び国家(地域)間で顕在化しております。全ての人が、公共施設をはじめ生活のあらゆる場面において、情報通信手段に対するアクセス機会及び情報通信技術を習得する機会に恵まれ、ITの恩恵を十分に享受し得る「デジタル・オポチュニティ社会」を実現することが重要です。
(2)脆弱性(Vuinerability)
高度なネットワークと、その上を流通するデジタル情報に対する社会経済活動の依存度が急速に拡大していることに伴い、ネットワークの破壊、デジタル情報の改ざんや漏えいによる社会的混乱の潜在的な危険性も拡大しています。
我が国においても、ハッカー・サイバーテロ対策等、多様な情報通信システムに支えられた社会の脆弱性(Vuinerability) に対応する施策を、関係省庁の連携及び官民間の一層強力な連携の下、情報セキュリティーポリシーの策定、研究開発のさらなる推進、個人情報保護に関する法制の検討等、総合的に講じます。

 


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